キーワード:”中学生の腰痛を診たら腰椎分離症を疑え”
腰椎分離症について ある程度知識のある方や 研修医・医師向きの情報です。
今まで当たり前と思っていたことがそうでなかったり 意外な事実を発見したりと、勉強するのは新しい発見があって面白いですよね。
では、さらに深い腰椎分離症の知識を手に入れましょう。
腰椎分離症のことをもっと詳しくーメカニズムから骨癒合率まで
腰椎分離症になるメカニズム
腰の部分を極端に後ろに反らしたり(伸展) 極端に腰をひねったり(回旋)を繰り返すと 腰椎分離症になりやすいです。
どの部分に どの様な力が加わって 腰椎分離症になるのでしょうか?
上のイラストを見てみましょう。
①腰椎を極端に反らすと(伸展)
②腰椎の後方では 下への力に変換されます
(お腹側では伸びて 背中側では縮む。今回 注目するのは背中側なので 縮む=下への力となる)
③L4/5 L5/S関節突起関節ではそれぞれ引き離す力となります。
(L4下椎間関節突起がL5上椎間関節突起に押し付けられるのと、L5下椎間関節突起がS1上椎間関節突起に押し付けられる事による)
④関節突起間部で 引き離す力が集中します。
この様な動きが繰り返し起こると、疲労骨折します。
疲労骨折をしやすい”ダメな動き”とは どういう動き?
「他の人とよく似た動きをしているのに 自分だけ 腰椎分離症になってしまった・・・」
なぜなのでしょうか?
腰椎分離症になってしまうのには いくつかの要素があります。
①骨と筋肉の成長のアンバランス
②腰椎の角度
③スポーツや日常動作での腰椎の使い方
①については 下の ”好発年齢が中学生になる理由”を参照してください。
②腰椎の角度
腰椎(特に第5腰椎前後の部分)が主に伸展の付近でばかり動いている状態の人は 腰椎分離症になりやすいです。
いわゆる ”反り腰”の人は 伸展の付近で動いています。
つまり、容易に 腰椎分離症になるストレスがかかりやすいです。
③スポーツや日常動作での腰椎の使い方
②の要素を満たしている人(屈曲はあまり出来ないが伸展は出来る)が、スポーツをする時に 極端な腰椎伸展を繰り返すと 腰椎分離症になりやすいです。
例えば
・サッカーのボールを蹴る時に腰椎が極端に伸展する
(蹴る時に足を後ろに引くと腰椎は伸展しやすいです)
・バットを振る時に 腰椎が極端に回旋する
(上半身を中心に力を入れていると、下半身の動きが遅れて 腰椎で極端に回旋する)
等があります。
また、うつ伏せで本を読むのはやめたほうが良いです。
この体勢は、腰椎の極端な伸展を引き起こします。
好発年齢が中学生になる理由
”中学生の腰痛を診たら 腰椎分離症を疑え”
極端な文章ですが、あながち嘘ばかりとは言えません。
腰痛がある成長期サッカー選手の47%が腰椎疲労骨折であったとの報告もあるのです。
名古屋の大学病院の先生が調べた結果、腰椎分離症132例のうち 13~15歳が66例を占め、ほぼ半数はこの年齢での受診となっている。
中学生が腰椎分離症になりやすいのは
①骨の発育が相対的に早いために生じる骨と筋腱組織の成長がアンバランスである事
②骨の脆弱性
が考えられる。
つまり、身長が伸びるのと 筋肉が成長するのとのバランスが保ちにくく、しなやかな動きが出来ない。
それに加えて、運動量や骨に加わるストレスが増える割には 骨自体の強さが弱い。
結果として、ぎこちなく強い力が 繰り返し腰椎に加わり 腰椎分離症となってしまうのです。
骨癒合率はどの程度なの?
MRIで急性期の疲労骨折であれば、コルセットを3~6か月程度装着することで 骨癒合することが期待できます。
しかし、腰椎分離症の病期や状態によって 骨癒合率は変わります。
CTによってそれらを判断することができます。
CT横断像で 初期(94%)・進行期(64%)・末期(27%)の骨癒合率です。¹⁾
CT矢状断面で 不全分離(78%)・完全分離(13%)の骨癒合率です。²⁾
参考文献:
1)Sairyo K.Sakai T.Yasui N:Conservative treatment of lumbar spondylosis in childhood and adolescence: the radiological signs which predict healing. J Bone Joint Surg 91-B: 206-209,2009
2)神谷光広ほか:成長期腰椎分離症の保存加療における矢状断CTの有用性。J Spine Res 6: 176-179,2015