心筋梗塞・脳卒中

イベニティは 骨粗鬆症の薬の中でも 圧倒的に効果があり、比較的 副作用が少ないです。

ただし、副作用に注意する必要はあります。

イベニティの副作用ー心筋梗塞・脳卒中の人は注意が必要

はじめからイベニティを投与できない人

心筋梗塞・脳卒中

副作用が起こる可能性が高い人には、はじめから投与しません。

日本では、イベニティで過敏症を起こした人と低カルシウム血症のある人には 投与してはいけません。

米国では、それに加えて過去 1 年以内に心筋梗塞又は脳卒中を起こした人も 投与できません。

米国では、より厳しい基準で管理されています。

下に、日本と米国の添付文書(薬の注意書き)の抜粋を載せます。

日本の添付文書
(効能・効果に関連する使用上の注意)
(1)本剤の適用にあたっては、低骨密度、既存骨折、加齢、大腿骨頸部骨折の家族歴等の骨折の危険因子を有する患者を対象とすること。
(2)海外で実施されたアレンドロン酸ナトリウムを対照とした比較試験において、心血管系事象(虚血性心疾患又は脳血管障害)の発現割合がアレンドロン酸ナトリウム群に比較して本剤群で高い傾向が認められている。本剤の投与にあたっては、本剤のベネフィットとリスクを十分に理解した上で、適用患者を選択すること。
(重要な基本的注意)
(3)虚血性心疾患又は脳血管障害のリスクが高い患者への投与は有益性と危険性を考慮して判断すること。また、投与する場合には、虚血性心疾患及び脳血管障害の徴候や症状を患者に説明し、徴候や症状が認められた場合は、速やかに医療機関を受診するよう指導すること。
米国の添付文書(Boxed Warning:心筋梗塞、脳卒中及び心血管死の潜在的リスク)
・ 本剤により心筋梗塞、脳卒中及び心血管死のリスクが増大するおそれがある
過去 1 年以内に心筋梗塞又は脳卒中の既往を有する患者には、本剤の投与を開始すべきでない。その他の心血管系リスクファクターを有する患者については、有益性と危険性を考慮して判断すること
・ 本剤投与中に心筋梗塞又は脳卒中が発現した場合は、本剤の投与を中止すべきである

過去 1 年以内に心筋梗塞又は脳卒中を起こした人に限ると、日本では投与できるのに、米国では投与できない。

不思議ですよね。

今後 日本での副作用の報告次第では、米国と同様の対策が取られる可能性があります。

私の場合 患者さんの副作用を減らすべく、米国基準でイベニティを使用しています。

一般的な副作用

関節痛(1.9%)、注射部位疼痛(1.3%)、注射部位紅斑(1.1%)、鼻咽頭痛(1.0%)があります。

重大な副作用として 低カルシウム血症(頻度不明)が挙げられます。

低カルシウム血症の症状には、手足の感覚異常や軽いけいれん・精神状態の変化などがあります。

この様な症状があれば、主治医に相談してください。

まとめ

・1年以内に心筋梗塞・脳卒中になった人は イベニティをしないほうが良い

・低カルシウム血症が怖い副作用である

追加項目ー発売後の副作用について

イベニティ発売後6か月(3/4~9/3)で16 人の死亡が公表されました。

重篤な血管系有害事象が39例
関連が否定できない死亡例が16例 

(アステラス・アムジェン・バイオファーマ(株) 2019 年 11 月  イベニティⓇ皮下注 105mg シリンジ 市販直後調査  より抜粋)

(イベニティ投与何人に対して この様なことが起きたかは公には公表されていないので、発現率は不明です。11月末に私の病院を担当している方からの情報によると、約4万3千人の方にイベニティを投与している中の16人の死亡とのことです。)

やはりこの結果を見る限り、過去 1 年以内に心筋梗塞又は脳卒中を起こした人にもイベニティは投与すべきではないかもしれません。

なぜ 心血管系有害事象が増えるのか

実は、増えていないかもしれません

ややこしい話で申し訳ありません。

実は発売前に、大規模な2つの試験を行っています。

①FRAME試験

単純に イベニティを投与するかしないかで比べたもの

こちらでは、重篤な心血管系有害事象は1.3%と同等でした。

②ARCH試験

イベニティとアレンドロン酸ナトリウムとを比べたもの

重篤な心血管系有害事象はイベニティ2.5% アレンドロン酸ナトリウム1.9%でした。

 

アレンドロン酸ナトリウムには 重篤な心血管系有害事象を減らす効果があるとも言われています。

(血清リン値の減少→血管石灰化の抑制→心血管有害事象の減少)

つまり、

アレンドロン酸ナトリウムが 重篤な心血管系有害事象を減らしていただけで、

イベニティが重篤な心血管系有害事象を増やしていたわけではない

とも考えられます。

 

真実はどこにあるのか・・・

今の段階では、過去 1 年以内に心筋梗塞又は脳卒中を起こした人は投与しないのが現実的です。

 

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