骨挫傷

キーワード:リンゴを落とした・・・

おばさん

旅行に行って こけてしまって、手をついたんです。

その後 手首がしばらく痛くて、病院に行ったら レントゲンで「骨折はないでしょう』と言われました。

念のためにMRI検査をしたのですが、”骨挫傷”と言われました。

そんなこと あるのですか?

医者正面

ありますよ。

MRIという検査法が出来て、新しい概念の病名が出てきました。

”骨挫傷(こつざしょう)”です。

”骨挫傷”とは、骨が折れる直前の状態です。

骨が折れる直前の状態・・・骨挫傷

骨挫傷(こつざしょう)・・・どういう病気なの?

”骨挫傷”・・・聞いたことがない病気ですよね。

医師である私も、この病気のことを理解するまで しばらくかかりました。

おばさん

骨挫傷とは どの様な病気なんですか?

医者正面

簡単に言うと、骨折する手前の状態です。

骨の形は同じだけれど、骨の中身が折れかけているのです。

かかる力がもう少し大きければ、骨折となっていました。

骨折するスローモーションをイメージしてください。

骨折が起きるまでのスローモーションで、骨折が起きる直前の状態が骨挫傷です。

骨折が起きる直前には、骨の内側(海綿骨)にストレスがかかり、この部分の組織が壊れ始めています。

この状態でストレスが無くなれば、”骨折はギリギリしなかったけれど 骨挫傷になる”のです。

診断はどの様にするの?

おばさん

骨が悪いのに、レントゲンで分からないのですか?

医者正面

”骨挫傷”は、レントゲンでは骨折は無いけれど MRIで骨折しかけているのです。

MRIを撮影しなければ、分からないです。

おばさん

そうなんですか。

医者正面

痛む部分が骨折しやすい場所で 押さえて痛い場合は、骨挫傷を疑い MRIを撮影します。

橈骨骨挫傷

骨挫傷の正確な診断は、MRIでしかできません。

上の図のオレンジ色の部分が骨挫傷しているとします。

MRI検査をすると、その部分の色が周りと異なって写ります。

こうして 初めて、骨挫傷と診断できるのです。

”リンゴ”を使った たとえ話

ちょっと一息パンダ

例えば 食べるリンゴがあります。
これを床に落とします
リンゴは 形は変わっていません。
しかし、皮を剥いて リンゴの色を見てみると 落とした部分は色が茶色になっています。
リンゴ
この落としたリンゴを レントゲン検査 CT検査 MRI検査してみましょう。

レントゲン検査では(影絵のように見えるので)リンゴは落としているものかどうか 分かりません。
CT検査では(形状を見る検査なので)リンゴの形は同じなので 落としているものか 分かりません。
MRI検査では(を見る検査なので)リンゴが落ちて茶色くなった部分は水分の状態が変わっているので 茶色くなった部分がわかります

この状態が骨で起こると、”骨挫傷”といいます

治療は?

おばさん

ギプスも包帯もせずに治そうと言われましたが、それで良いのですか?

医者正面

ギプスをするかしないかは、骨挫傷の場所や患者さんの状態に依ります。

手首の骨挫傷で、周りの組織の損傷が無ければ、ギプスも包帯も必要はありません。

おばさん

骨が悪いって聞いたのに「今回 ギプスがないのはおかしいな」と思いました.

今の説明で 適切な治療であることが分かりました。

基本的には、無理をしなければ 自然に治ります。

3~6週間が目安です。

しかし、無理をすると 骨挫傷⇒骨折 へと移行します。

医者ギプスをするかどうかの判断

骨挫傷の際 その部分の負荷をどの程度減らすかは、以下の要素で決めます。

・骨粗しょう症の有無
(もともとの骨が弱ければ、少しの力でも骨折に移行しやすい)
・骨挫傷の部位
(体重がかかる場所は 骨折に移行しやすいので、松葉杖を使う)
・周囲の組織の損傷
(損傷がひどければ、ギプスをすることもある)
・運動能力
・性格

以上を総合的に考え、判断します。

場合によっては、ギプスをしたり 松葉杖をつくことも必要となります。