脊椎圧迫骨折ー診察１ー会話形式

脊椎圧迫骨折の患者さんと先生とのやり取りを、会話形式で見ていきましょう。

診療の流れを疑似体験していただきます。

先ずは　１回目の診察です。

重い荷物を持った後から背中が痛くなってきました。

病院では　どんな病気と言われるのでしょうか。

診察前

自己紹介

こんにちは
72歳　女
３日前に　1人でスーパーへ買物に行ったんです。
その時　洗剤が安かったので　いつもよりもたくさん　買いだめしました。
両手に荷物を持って　15分くらい歩きました。
家に帰って　荷物を降ろして、少しゆっくりしたかったので　テレビを見ながら　温かいお茶を飲みました。
しばらくして　両肩が少し痛くなりました。これは2日くらいで収まりました。
肩の痛みが収まったら、次は背中の痛みが出てきました。
初めは　背中の痛みは　長く立っていた時だけだったのですが、段々と痛みが強くなってきて　今は朝に布団から起きるのが一番痛いです。
心配になって　病院で診てもらうことにしました。

診察

こんにちは

今日はどうされたのですか？

5日くらい前から　背中が痛いんです。
初めは　長時間立った後にだけ痛かったのですが、今は　朝に起き上がる時や　寝返りを打つ時・長い間立っているときに痛いです。

痛くなった原因で　思い当たることはありますか？

背中が痛くなる2日前に　買い物で重いものを持ちました。
思い当たるとしたら　その程度です。

診察しますね。

腰の骨を押さえても痛くはありませんね。
腰の上の方の骨をトントンたたくと　奥に痛みが出てくるのですね。
下肢の力はしっかりしていますね。
足の甲の動脈もしっかり触れます。
膝の腱反射も正常です。

では　まず　レントゲンをとってきていただきます。

はい。分かりました。

脊椎圧迫骨折では　骨折している部分を人に押されても　痛くないが、トントンたたくと痛いことがよくあります。（叩打痛：こうだつう：と言います。）

その理由は、
①背中の皮膚から骨折している部分までの距離が5㎝程度あり　距離が離れていて
②背中の皮膚を通して触れるのは　骨の中でも折れていない後ろの部分であり
③背中の骨は　上下の骨と強力に支えあっていて
④そういった状態の骨を　後ろからゆっくり押さえただけでは　奥の骨折している部分には　エネルギーは伝わりにくい。
⑤トントンと　こぶしで叩くと　奥までエネルギーが伝わって　痛みが出る。

腰のレントゲンで　脊椎圧迫骨折を疑います。正確な診断にはMRI検査が必要です。
本日　入院していただき、明日　MRI検査をします。

急なことですが、ご自分の体のことなので　入院して　大事をとったほうが良いです。

レントゲンだけでは正確な診断はできません。
例えば、レントゲンでは全く正常なのに　MRIでは骨折していることもあります。
逆に　レントゲンで骨折があるのに　MRIではそれが古い骨折で　骨の質は問題ないということもあります（この場合は　古い骨折で　いわゆる治っている状態なので　治療は必要ありません）。脊椎圧迫骨折があっても　入院されない方もおられます。
本人の状態や　家族の方が介護できるかの状態などによって　入院が必要かどうかは　総合的に判断します。

はい。分かりました。