母親が圧迫骨折をして、主治医の先生に「偽関節になることもあるので、無理をしないようにしてください」と言われました。 偽関節という言葉は 聞いたことがありません。 偽関節について教えてほしいです。
分かりました。 では、勉強しましょうか。
圧迫骨折ー偽関節のことを知ろう
偽関節って何?
偽関節とは、偽物の関節と書きます。 一つの背骨の骨が 上下2つに分かれて、くっつかない状態なんです。 そして、背中を曲げたり伸ばしたりすると、上下の骨はぐらぐらします。
ぐらぐらしていたら 怖いですね。 痛そう。
強烈な痛みで動けない方もおられますが、全く痛みはなく 普通に生活されている方もおられます。
偽関節とは、骨がひっつかなかった状態です。
骨の赤い三角形の部分は 正常な硬い骨ではなく 空洞(正確には水分・瘢痕組織・正常でない骨組織などからできている)なので 体の動きに耐えきれず 動いてしまいます。
本来 硬い骨のはずが、そこに偽物の関節を作っているように振舞います。
本来動かない所が 偽関節となり動いてしまうと 色々な不具合が生じやすいです。
①体を少し動かしただけで背中が痛い。
②重いものを持った時に 痛みが出やすい。
③偽関節になっている部分が ズレたり 神経に当たったりする。
④背中が曲がる。(円背・猫背)
どうして偽関節になるの?
骨折したら 骨は自然にくっつくと思っていました。 骨がくっつかないこともあるのですか?
一般的に 骨折の後に、骨がくっつきやすいように ギプスなどを巻くでしょ。 骨がくっつくためには いくつかの条件が必要なのです。 お母さんの第1腰椎圧迫骨折は、様々な要因で 骨がくっつきにくい場所なんです。
骨折したら しばらくすると 勝手に骨がくっつくわけではありません。
元通りに直すためには
①元通りの位置に骨を戻す(整復)
②整復した位置を保持する(手術による固定・ギプス・装具)
③適切な時期に周囲の関節を動かしたり筋力をつけたりする(リハビリ)
が必要です。
脊椎圧迫骨折の場合
:難しいです。
例として、つぶれた木綿豆腐をもとに戻すのは難しいでしょう?
:難しいです。
体の奥のほう(脊椎)を固定しようとしても 遊びの動きが出てしまって 厳密な固定はできません。
呼吸していても 寝返りしても、背骨は少し動きます。
また、ひねる動作や圧迫の動作は装具だけでは対応しきれません。
:難しいです。
上記の①・②を完全に達成したままリハビリをすることは厳密にはできません。
上記のような特徴から、特に第12胸椎から第2腰椎にかけては 偽関節となることがよくあります。(ある文献では この部位では30%の方が偽関節になりました。)
骨粗しょう症性椎体骨折全体でも 12~20%の方が偽関節になると言われています。
治療
第1腰椎圧迫骨折の場合、3割が偽関節になるのですね。 確率が高いですね。 偽関節になってしまったら、どのような治療があるのですか?
先ずはその時の症状が重要です。 痛くもなく 普通の生活をしている方の場合、骨癒合しやすくなる薬を注射をしたり、コルセットを長期間つけてもらうことが多いです。 痛みが強くて 足などに神経症状が出ている場合は、手術をするほうが良いです。
心配です。 どの様にしたら 偽関節になりにくいのですか?
コルセットをしっかりと付けたり、生活での動きをゆっくりにしたりすることは有効です。 定期的に病院を受診して、レントゲンで経過を見ることも重要です。 途中で骨折部が悪化してきたら、自分が無理をしている証拠です。 無理をしないように生活してください。
脊椎圧迫骨折の部分が偽関節になっても、直ぐに手術をするわけではありません。
腰痛などの症状が無く 神経障害が無ければ、手術をしなくても良いです。
しかし、人によっては 強い痛みや 遅発性神経障害が出現して 何らかの対処を要す必要があります。
骨癒合しやすくなる薬を投与したり、コルセットでの固定期間を長めにしたり、手術をしたりと、様々な治療があります。