特発性大腿骨頭壊死症 治療 骨切り術

特発性大腿骨頭壊死症の治療とは・・・骨切り術と人工関節

特発性大腿骨頭壊死症と診断されたが、今後どうなるのか心配・・・

そこで、特発性大腿骨頭壊死症の治療についてみていきます。

問題 : 特発性大腿骨頭壊死症は、何を基準に治療法を選ぶのでしょうか?
答え : 部位

そうなんです。

特発性大腿骨頭壊死症の治療で重要なのは、どの部位に骨壊死が起こっているかということなのです。

今後 負担のかかりそうな『部位』なら早めの手術を

負担がかかりにくい『部位』なら 年に数回のレントゲンなどの検査をします。

特発性大腿骨頭壊死症の治療は『部位』がキーワード

部位別の治療法を見ていきましょう。

タイプA

特発性大腿骨頭壊死症 治療 typea

この部位に特発性大腿骨頭壊死症が起こった場合、積極的に手術はせず、まずは経過観察をします。

この部分は骨がつぶれにくいので、年に数回レントゲンやMRIを撮影しこの部分がどうなっていくか様子を見ます。

将来的に骨がつぶれてくる可能性は、0~20%程度です。

タイプB・タイプC1

特発性大腿骨頭壊死症 治療 typeb

この部位に特発性大腿骨頭壊死症が起こった場合、悪化する可能性が高いです。(10~70%)

そこで、内反骨切り術(正確には転子間弯曲内反骨切り術)を行います。

下で出てくる回転骨切り術や人工股関節置換術と比べると、手術時の体への負荷が小さくて済みます。

内反骨切り術をすることにより、骨壊死を起こしている部分に力が加わりにくくなります。

タイプC2

特発性大腿骨頭壊死症 治療 typec2 回転骨切り術

この部位に特発性大腿骨頭壊死症が起こった場合、悪化する可能性が非常に高いです。(70%以上)

早めに回転骨切り術(正確には大腿骨頭回転骨切り術)をするほうが良いです。

「少しでも手術を遅らせたい」という気持ちを持つのはわかります。

しかし、その間に骨がつぶれてきて・・・

・痛みにより筋力低下が起こる
・損傷がないはずの軟骨が傷ついてくる

その結果、回転骨切り術もできないほど状態が悪化することがあります。

骨頭がつぶれる前に骨切り術に踏み切ることが 非常に重要です。

さらにひどい状態の場合

上記の骨切り術は、股関節の骨や軟骨の状態が比較的良好である(形が整っている)ことが条件です。

特発性大腿骨頭壊死症 人工股関節

中には、「痛みを我慢して歩いていました」という方もおられます。

そして、レントゲンを撮影してみると骨や軟骨の状態が悪いことも・・・

そのような場合、人工骨頭または人工股関節の手術をする場合もあります。

回転骨切り術をしたが、その後状態が悪くなってきた場合も同様です。

 

骨切り手術時の工夫

骨切り手術をする際、本来球状のボール(骨頭)がつぶれている(圧潰している)場合があります。

つぶれた状態のままだと、後々不具合が出てくることがあります。

例えば、つぶれた部分が軟骨を傷つけて痛みが出たり・・・

そこで、

つぶれたボール➡球状のきれいなボール

へと、形を整える試みもされています。

奥に人工骨(バイオペックス®等)を注入して、つぶれた部分を元通りに戻して形を整えるのです。

 

骨切り術と人工関節のメリット・デメリット

特発性大腿骨頭壊死症の手術だけでも何種類も手術方法があります。

それぞれの手術に メリット・デメリットがあるんです。

骨切り術のメリットは、自分の組織を使って手術をするので、状態が良ければ1回の手術で生涯もつ所です。

人工関節のメリットは、かなり状態の悪い骨頭でも痛みを改善できる所です。

それぞれの手術の特徴を見てください。

骨切り術

1度の手術で治療が完結する可能性がある

骨切り術は、自分の組織を使って手術をするので、状態が良ければ1回の手術で治療が完結します。

スポーツができる

骨切り術の場合、術後3か月を目安にスポーツ復帰も視野に入れることができます。

股関節のストレッチをしても 脱臼することはありません。(人工関節では脱臼することがあります)

手術の侵襲が小さい

内反骨切り術の場合、手術時の傷は比較的小さいです。

傷だけでなく、手術時に切開・切離する組織も少ないです。

人工関節

骨頭の骨や軟骨がひどく壊れていても手術ができる

人工関節のメリットは、ズバリ、これにつきます。

骨や軟骨の状態が悪くても、それらをすべて人工のものに取り換えるので、痛みから解放されます。

痛みが取れやすい

股関節は様々な組織が組み合わさり・協調されて関節の用をたします。

逆に言うと、様々な組織が痛みの原因ともなります。

骨・軟骨・靭帯・関節唇など・・・

それらを一塊として取り換えるため、痛みが取れやすいです。

人工関節の寿命がある

せっかく手術は成功したのに、15~30年すると人工関節の寿命が来てしまいます。

長年の負荷に耐え切れず、骨と金属の間が緩んだり、金属と金属の間にあるクッションがすり減ったり・・・

手術方法や 患者さんの体重・活動性によりますが、15~30年が一つの目安です。

骨切り術と人工関節ー主治医目線でどちらを選ぶのか

実際にどの手術がよさそうかを決めるのは主治医になることが多いです。

(もちろん、患者さんの希望も考慮されます)

そこで、主治医目線でどの手術を選ぶかを見ていきます。

骨頭の状態ー悪ければ人工関節

・骨頭がひどくつぶれている
・軟骨がすり減っている
・骨壊死の範囲が広い

上記の場合は、人工関節となります。

(臼蓋側の状態が良い場合は人工骨頭となることもあります)

年齢ー若ければ(できれば)骨切り術

比較的若年の場合(60歳くらいが分かれ目)できるだけ骨切り術を選択したいです。

それには、いくつかの理由があります。

・人工関節にすると、15~30年位で再び人工関節への再手術の可能性がある(人工関節の寿命)
・人工関節だと激しいスポーツができない
・人工関節だと脱臼の危険性がある

つまり、人工関節のデメリットが嫌なために、若年者ではできるだけ骨切り術をしたいと考えます。

上記で再手術についても言及していますが、
人工関節➡人工関節への再手術は難易度が高いです。(その分 様々なリスクも高くなります)
骨切り術➡人工関節への再手術の難易度は低いです。