五十肩について ある程度知識のある方や 研修医・医師向きの情報です。
今まで当たり前と思っていたことがそうでなかったり 意外な事実を発見したりと、勉強するのは新しい発見があって面白いですよね。
では、さらに深い五十肩の知識を手に入れましょう。
五十肩の知識をさらに深く
ひどい五十肩の人は 腱板の完全断裂をしていない場合が多い
五十肩の人は 他にも肩の病気がありはしないかと心配します。
肩の病気の代表格が 腱板断裂です。
(多くの野球選手が、腱板断裂のために 選手生命を絶たれています。)
腱板断裂は 人によっては手術を要す病気です。
早めに腱板断裂があるか分かるほうが 適切な治療方針を立てやすいです。
以下の論文では、五十肩のひどさによって 腱板断裂の頻度が違うことが示されています。
意外な結果ですが、ひどい五十肩の人は 腱板完全断裂を起こしていない人が多いんです。
ここでは仮に、かるい・中間・ひどい に分類します。それぞれにおいて腱板が、正常・不全断裂・完全断裂のどの状態であるかを判断しました。
腱板正常 | 不全断裂 | 完全断裂 | |
かるい | 35% | 16% | 50% |
中間 | 44% | 17% | 39% |
ひどい | 91% | 9% | 0% |
この数字を見ると、五十肩の重症度がひどくなるほど 腱板は正常の人が多いです。
この論文結果では、五十肩がひどい人の中には 腱板完全断裂の人はいません。
逆に 五十肩の重症度が軽いと、腱板の状態が悪そうです。
対象:
35歳以上・肩関節痛あり・可動域制限を主訴に受診・糖尿病なし・明らかな外傷なし・レントゲンで石灰化なし・変形性肩関節症なし
の方で、
①前方挙上が検束より10度以上低下
②下垂位外旋が健側より10度以上低下
③結帯が健側より2椎間以上低下
しているものを可動域制限ありと定義し、五十肩と診断。(379肩)
分類方法:
五十肩の状態を3つに分類
高度な他動可動域制限を
①前方挙上100°以下
②下垂位外旋10°以下
③結帯L5以下
と定義。
ひどい:①~③すべてを満たす 可動域制限が高度なもの(89肩)
中間:①~③1~2つ満たす 可動域制限が中程度なもの(111肩)
かるい:①~③すべてを満たさない 可動域制限が軽度なもの(179肩)
とする。
参考文献:上田祐輔ら:拘縮肩患者の腱板病変評価ー379肩の前向き検討、J Bone Joint Surg 97-A:1233-1237,2015
臨床に活用する:
①ひどい五十肩の人は 腱板完全断裂の可能性が低いので MRI検査はなくても良い。
②かるい五十肩の人は 腱板断裂の可能性が高いので、留意する。
五十肩の症状が改善した後に 腱板断裂の症状があるようなら MRI検査を行う。
臨床での注意点:
①五十肩の症状と 腱板断裂の症状は違う。
しっかりと分けて考えて、それぞれについて 治療戦略を立てる。
②五十肩と腱板断裂を合併している場合、先ず治療を開始するのは 五十肩である。
たとえ 腱板完全断裂があり 手術適応があっても、先ずは五十肩の治療(可動域を改善)をしてから 腱板断裂の手術をするのが通常である。