美容クリニックで『ボトックス』というのを見ますが、『ボトックス』とは何者なのですか?
芸能人でも『ボトックス』をしている人は多いそうですね。
主には、シワをとる目的でされているようですね。
まるで魔法ですね。
しわが取れるのですか!
身体も心も若返りそうですね。
魔法ではありませんよ。
実は、『ボトックス』とは、A型ボツリヌス毒素製剤なんです。
毒素という文字が入っているのです・・・
うーーん
こわっ
『ボトックス』の量が極端に多すぎると毒になります。
治療に使う量では問題ありませんよ。
ボトックス注射ー美容にも使いますー注意事項に気を付けて・・・
『ボトックス』ってもともと何者なの?
ボツリヌス菌が出す毒素なんです
自然界に ボツリヌス菌という細菌がいます。
その ボツリヌス菌は毒素を産生します。
その中の一つ 『A型ボツリヌス毒素』がボトックスです。
なんと、毒素なんです。
その毒が体の中に入ると、力が入りにくくなります。
これは、筋肉と神経の間の情報伝達をボツリヌス毒素が邪魔するためです。
ボツリヌス毒素が大量に体の中に入ると、呼吸も出来なくなり 死んでしまいます。
・・・毒素を薬として使うなんて・・・と 思う方も居ますが、使いようによっては 安全で効果もあるんです。
医薬品として、ボトックス® ボトックスビスタ®という2つの商品が出ています。
美容領域(眉間又は目尻の表情皺)には ボトックスビスタ® を用います。
その他の領域には ボトックス® を用います。
ボトックス®とボトックスビスタ®の中身は同じなんです。
美容領域ではどのように使うの?
ボツリヌス毒素の、『力が入りにくくなる』という作用を利用するのです。
注射した部分に『力が入りにくく』なります。
そこで・・・
眉間や目尻の部分に注射をします。
この部分には、皺眉筋・鼻根筋・眼輪筋があり、それらの筋肉の『力が入りにくく』なります。
なるほど!
注射をしてその場所の筋肉の力を弱くするのですね。
だから顔の力が抜けて、シワがなくなるのですね。
美容領域以外ではどのように使うの?
ボトックスは、美容以外の領域でも多く使われています。
私も、患者さんに注射することがあります。
力が入り過ぎたり、痙攣している筋肉に注射するのです。
以下が、健康保険がきく病名です。
・眼瞼痙攣
・片側顔面痙攣
・痙性斜頸
・上肢痙縮
・下肢痙縮
・2歳以上の小児脳性麻痺における下肢痙縮に伴う尖足
・重度の原発性腋窩多汗症
・斜視
・痙攣性発音障害
・・・脳卒中になって、腕や足の力のコントロールがしにくくなって 力が入りすぎてしまう人・・・
この様な方に注射することが 比較的多いです。
具体的な使い方は?
筋肉の中に注射をします。
”どの筋肉の力を緩めれば 症状が良くなるのか”を考えて、その筋肉めがけて注射します。
筋肉によって、注射する場所や何か所に注射したほうが良いか目安があります。
また、注射できる量も目安があります。
下に 眉間のシワを摂るための注射の仕方を抜粋します。
眉間の表情皺通常、65歳未満の成人にはA型ボツリヌス毒素として合計10〜20単位を左右の皺眉筋に各2部位(合計4部位)及び鼻根筋1部位に均等に分割して筋肉内注射する。なお、症状再発の場合には再投与することができるが、3ヵ月以内の再投与は避けること。
- 〈注射部位〉
- 〈ボトックスビスタ添付文書より抜粋〉
注射する間隔は?
3か月以上間隔を開けます。(病名や病状によっては1~4か月開ける)
注射をして数週間で徐々に効果が表れて、3か月程度効果は続きます。
そして、徐々に効果はうすれます。
効果が薄れてきたら 再び注射をします。
・・・そうなんです。
ずっと効果が続くわけではないのです。
薬自体の値段はどのくらいするの?
薬には 薬価というものがあります。
病院で薬を使ったときの 薬の定価です。
ボトックスの場合、
50単位:38199円
100単位:68579円
です。
注射をして死ぬことはないの?
毒素の製剤なので、致死量があります。
筋肉内注射をした場合、致死量は数千単位と考えられています。
実際治療に使う量は、1回当たり最高400単位です。
眉間に10~20単位注射する程度なら、致死量からは程遠いですね。
注意事項はありますか?
”毒素”と名の付く薬なので、禁止事項はいくつかあります。
・注射した部位をもまない
(注射した薬が周囲に広がると思わぬ副作用が・・・
そんなことを防ぐためです)
・入浴・激しい運動はダメ
・避妊
女性:2回の月経が終わるまで
男性:3か月
・転ばないように注意
(筋力のバランスが変わるため)