抗癌剤治療を行う時に脱毛するのは、有名な話です。
抗癌剤は 活性の高い細胞を攻撃する性質があります。
髪の毛を作る細胞(毛根細胞)は 比較的 活性が高いため、抗癌剤が毛根細胞に到達すると 攻撃を受けるのです。
今回は 早期乳癌の患者さんに抗癌剤を投与した際、”頭皮冷却装置”を使うと 脱毛が軽減されたという論文です。
抗癌剤 髪の毛抜ける 副作用 何とかしたい 頭皮冷却装置
どうして”頭皮冷却装置”で 脱毛が軽減するの?
なぜ 頭を冷やすと、髪の毛が抜けにくいのでしょうか。
それは、頭の表面の血流量や、髪の毛を作る細胞の活発度から説明できます。
①”頭皮冷却装置”を使って頭皮を冷却処置すると 頭皮の血管が収縮し、毛根細胞が抗癌剤にさらされにくくなる
②また 冷やされることにより、毛根細胞自体の活性も低下しする。(例:冬に寒いところでスキーをしていると、ひげが伸びにくい)活性の低下した細胞は、抗癌剤の影響を受けにくい
以上の理由から、頭皮を冷却することが 脱毛を軽減すると考えられています。
論文の内容はどの様なもの?
次に、論文に書いてある結果を見ます。
初期乳癌の補助化学療法(抗癌剤治療のことです)をした122症例を対象としたものです。
122症例のうち、106症例に頭皮冷却装置を使用し、16症例は使用していません。
化学療法の30分前から 終了後90~120分 3℃で冷却しました。(頭皮の温度は15℃程度になった。)
50%の脱毛の有無を比較しています。
使用した装置は、DigniCap又はDignitana AB です。
結果
頭皮冷却装置使用 | 50%未満の脱毛 |
使用 | 63.2% |
不使用 | 0% |
つまり、頭皮冷却装置を使用しない人は全員 50%以上脱毛した。
頭皮冷却装置を使用すると 37.8%の人は50%以上脱毛したが、63.2%の人は 50%未満の脱毛だった。
参考文献:Association Between Use of a Scalp Cooling Device and Alopecia After Chemotherapy for Breast Cancer.JAMA. 2017 02 14;317(6);606-614.
もし抗癌剤治療を受ける際に 頭皮冷却装置を使えるのなら、髪の毛が抜けにくいので 絶対に使うべきですよね。
今後の課題
日本では 保険適応にはなっていないです。
また、抗癌剤の種類によって 結果が異なることが考えられるので、各々の抗癌剤での検証が必要です。